<事案>
N社の従業員Kは「お金が必要、手取りを減らしたくない」と社会保険に加入しないでほしいと懇願し、N社はKを社会保険に加入させなかった。その後2年間就労していたが、契約更新の際に「稼ぎたいので休日なしで働かせてほしい」などと要求。会社が受け入れられないと断ると、Kは労働契約の更新に応じず、契約書を叩き付け、出て行ってしまった。会社はKを契約期間満了による雇止めにしたが、Kは「不当な解雇だ撤回せよ。未払いの残業代・パワハラの慰謝料など200万円支払え」と主張。さらに2年間遡って自分を社会保険に加入させるよう要求し、労働局のあっせん通知が送られてきた。
<解決>
N社と日本経営労務で打ち合わせの上、あっせんに乗らず、Kと示談を行いました。その結果、雇用関係は終了すること、社会保険に遡って加入すること、解決金20万円で合意となりました。未払いの残業代もありましたが、社会保険の遡及加入で発生する個人負担分との相殺となりました。
N側と交渉を続けるうち、Nの在職中の問題(使い込み)も露呈し、結果、こちらの主張する150万円で和解となりました。
相手の請求額 | 解決額 | 差額 |
---|---|---|
200万円 | 20万円 | 180万円 |
<ポイント>
「お金に困っている」という求職者・従業員は労務リスクが高いため注意が必要です。Kは今回の問題に限らず、他の従業員や顧客と何度もトラブルを起こしていました。問題社員化する素質のある求職者は面接・採用の時点でフィルターにかけることが望ましいです。CUBIC適性診断を行えば、協調性がない、従順性がない、金銭に執着するといった要素を見抜くことができます。
また、社会保険に加入したくないと懇願する社員に対しては、本来、労働時間により加入義務があることを説明し、その上で社会保険に加入しない働き方(通常の社員の3/4未満の労働時間)を選ばせる必要がありました。自ら入りたくないと懇願しながら、後になって「社会保険に入れない会社は酷い」と手のひらを返してくる従業員も存在するのです。
<事案>
入社当初より業務上のミスが多かった社員A。試用期間が終わり本採用後においても、社外秘メールの誤送信、重要書類の紛失、納期をすっぽかすといったミスが続いたため1年後、K社は、改善の見込みがなしとの判断でAに解雇を通知した。すると翌日には社外のユニオン(労働組合)より「Aが我がユニオンに加入した」との通知書が会社に届いた。ユニオンは「Aの解雇は不当であり、撤回を求める」とK社に団体交渉を申し込んできた。
<解決>
K社側は能力の著しい欠如であり将来性は到底見込めない、解雇は撤回できないと主張。ユニオン側は、能力不足なら試用期間で辞めさせればよかったはず、本採用したのだから、会社には彼を教育する義務がある。解雇は到底認められないと応戦。交渉はこう着状態に。
このままで交渉決裂になるため、最終的に金銭解決を提案。ユニオン側は6ヶ月分の賃金を請求してきましたが、会社側は2ヶ月分で反論。交渉の末、3ヶ月分相当の賃金を解決金としてユニオンへ振り込むことで合意に至りました。
ユニオン側の請求 | 解決額 | 差額 |
---|---|---|
180万円 | 90万円 | 90万円 |
解雇を撤回 | 解雇は有効 | 解雇 |
<ポイント>
「能力不足」による解雇の要件は厳しく、解雇に至る前に相当期間におよぶ改善指導を行う、配置転換を行うなどの解雇回避努力を講じることが必要になります。K社ではこの措置が不十分だったことが、ユニオンに突かれるスキとなってしまいました。
また、ユニオン側も指摘するように、能力不足が明らかであれば試用期間で見極めるべきだったと言えます。採用した社員の能力不足は会社に教育する責任があるとされるからです。
このように「能力不足人材」は採用段階の見極めが重要になります。基礎能力試験や採用適性診断などの面接試験を行えば、面接だけでは見抜けない、能力や特性を見抜くことができます。
もし能力不足人材を採用した場合は、スキルや知識、マナー等を身に付けてもらうため、教育や訓練が必要になります。会社の中だけで補いきれない場合は、外部の教育や研修の活用が有用です。戦力に育てば問題もなくなりますし、やむを得ず解雇となる場合も、前述のように改善指導を尽くしたという実績が必要になります。
Q1. | 非常識・ものを知らない若手社員が多くて困っています。 あいさつや敬語、時間厳守といった基本的なこともわかっていないようでいつお客様に対して無礼をしないか、とても心配です。 |
|
A1. | こんなことも知らないのか…と「ゆとり世代」の新人に頭が痛いという話をよく聞きますが、いつの時代も「今の若いもんは」というものです。 新入社員に基本的な能力をつけさせる教育は会社に課された使命とも言えます。 業務については先輩や上司から教える流れをつくる他、ビジネスマナーや一般常識については、外部の訓練機関を活用してはいかがでしょう。 効率よく身に付けさせることができます。 |
Q2. | ツイッターやフェイスブックで社内や顧客のことを書き込んでいます。 やめさせたいのですが… |
|
A2. | 社員が軽い考えで、会社の内部事情を暴露したり、個人で反社会的な行為をアップしたりして、「炎上」し、会社に損害を与えるケースが多発しています。 これは大企業に限らず、実際に顧客と直接接する小売業などでは大変由々しい問題です。具体的に損害があれば、懲罰や賠償が伴うことをしっかり説明し、社内でSNS利用のガイドラインやルールをつくってはどうでしょう。 |
Q3. | 人と話すのが苦手な営業職や要領の悪い事務職など、うちの会社には能力不足というか、いわゆるローパフォーマーの社員が多い気がします。 | |
A3. | 仕事への向き・不向きには、能力や経験の他、本人の素質やモチベーションなども重要です。実は素養のある人材をミスマッチな仕事に充ててしまっている可能性があります。現在は、そのような本人の特性を診断できるツールも開発されています。適材適所の人事考課に、このような基礎能力検査や適性診断を活用してみてはいかがでしょう。 |
Q4. | どうも社員同士で不倫をしている者がいるようです | |
A4. | 既婚者の社内不倫は、不法行為として懲戒処分の対象になり得るものです。懲戒の程度は社内への影響や役職等によります。 不倫の噂だけで当事者が認めない場合、懲戒するのは難しいと言えますが、事実なら懲戒にあたることを日頃より注意しておくべきでしょう。 不倫が社内に悪影響を及ぼしている場合は、当事者の配置転換等も考える必要があります。 |
Q5. | 社員による横領が発覚しました……。 | |
A5. | 横領のような犯罪行為の場合、解雇予告(手当)も不要な懲戒解雇に該当する可能性があります。ただし、懲戒解雇は就業規則等で規定していない場合は行うことができません。 また、労働基準監督署に対する除外認定も必要で、時間も手間もかかります。 会社を守るためには懲戒解雇に拘らず、他の方法を取るべき時もあります。 ぜひ専門家にご相談ください。 |
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